大腸内視鏡検査のエビデンス

死亡率も罹患率も高い大腸がん、しかし早期発見で9割以上は治る

大腸がんは、初期に治療すれば5年生存率が95%を超えるものの、進行すればガクンと急降下し、20%を切ってしまうことが、がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計より報告されています。

大腸内視鏡下ポリープ切除により大腸がん死亡率が53%低下

大腸内視鏡下のポリープ切除により、大腸がんによる死亡率が53%低下することが、

New England Journal of Medicine誌に掲載されています。

たった1回の大腸内視鏡検査により大腸がん発生率が43%低下

55 歳と 64 歳の間に1 回の大腸内視鏡検査を実施することにより、大腸がんの発生率および死亡率が著しく低下することが、Lancet 誌に掲載 されています。11.2 年間の経過観察期間において、大腸癌の発生率は43%、死亡率は33%減少していました。

1回の大腸内視鏡検査で17年持続する死亡率の低下

1回の大腸内視鏡検査により、大腸がんの発生率が35%減少、死亡率は41%減少し、その効果が、検査後17年目まで確認されたことが、Lancet 誌に報告されています。

大腸内視鏡検査による大腸がん死亡の減少効果は米国でも32%

米国では、大腸内視鏡検査の受診率増加により、50 歳以上の大腸がん罹患率が 32%減少し、大腸がん死亡数も 34%減少したことが、米国がん協会(ACS)より発表されています。米国では、大腸がんのスクリーニングを、便潜血検査ではなく、大腸内視鏡検査により行っています。

大腸内視鏡検査を反復して行うことにより、大腸がん発見率が25~33%アップ

大腸内視鏡の反復検査が単回検査と比較して有効かどうかを検証した結果が、「Journal of the National Cancer Institute」 誌に報告されています。大腸内視鏡の反復検査により、大腸癌・進行腺腫(悪性度の高いポリープ)の発見が、女性で 1/4、男性で 1/3 増加 しました。発見癌は、80%以上が stage I・II で ありました。

大腸内視鏡検査でポリープがみつかったら、3年以内に再検査を!

大腸ポリープ切除後3年間のAN(径10mm以上の軽度異形成、高度異形成、または浸潤がん)累積発生率は、米国のNational Polyp Study(NPS)では3.3%、日本のNational Polyp Study(JPS)では1.9%で、浸潤がんの発生率は0.13%と0.07%でありました。
3年以内に、必ず再検査を受けましょう。

大腸内視鏡検査は症状がないときに行うのが肝要、早期大腸がんを38%多く発見

大腸内視鏡検査により、原発性大腸がんと診断され手術を受けた 1809 例の調査結果、 なんらかの症状発現後に大腸内視鏡検査を施行した群では、症状発現前に施行した群と比べて、がんが進行しており(AJCC 分類 I 期の割合 15% vs 53%)、その後の生存率も低いことが判明(P<0.001)、Surg Endosc 誌に報告されました。

「大腸内視鏡検査異常なし」で10 年後大腸がんリスクが46%低下

大腸内視鏡によるスクリーニングで異常なしと判定された人は、検査後10 年以降も、大腸癌発症と死亡のリスクが低かったする研究結果がJAMA Intern Med 誌に掲載されました。大腸内視鏡スクリーニング陰性群の大腸癌発症リスクは、1 年目が 0.05、10 年目は 0.54。大腸癌死亡は、1 年目が 0.04、10 年 目は 0.12 でありました。

無症状が症状の大腸がん、40代以上の「大腸内視鏡検査」は必須

大腸がんは早期発見すれば完治率90%以上ですが、ほとんど初期症状がなく、がんがかなり進行した後になって自覚症状が現れます。普段症状がなくても40歳以降、家族歴、喫煙と飲み過ぎなど、高危険群に属するなら、「大腸内視鏡検査」が必ず必要です。

大腸内視鏡検査が必要な便秘とは

大腸内視鏡検査が必要となる便秘は以下の通りです。 

・便に血液が混じる 

・体重減少 

・数カ月以内の発症や悪化 

・大腸腫瘍の家族歴があるもの 

・50 歳以上 

・貧血

大腸ポリープの家族歴がある人の大腸がんリスクは最大5.00倍

大腸ポリープ患者の第一度近親者の大腸がん(CRC)リスクは1.40倍で、ポリープのある第一度近親者数が多いほど、またポリープの診断年齢が低いほどリスクが高いことがBMJ誌に報告されました。ポリープと大腸がんがある第一度近親者が2人以上いる場合、リスクは5.00倍まで上昇しました。

S状結腸までの大腸内視鏡検査でも大腸がんリスクが33%低下

S状結腸内視鏡1回の実施により、大腸がんの発症が33%、死亡が39%低下することが、Ann Intern Med誌に報告されました。追跡期間中央値は、15~18年。大腸内視鏡の有用性が改めて確認されました。

増加する若年性大腸がん、大腸内視鏡検査の推奨年齢を5歳引き下げ

 世界中のさまざまな国で増加が報告されている若年性大腸がんの発症に、赤肉やアルコールの摂取量の多さなどが関係していることを示唆するデータが報告され、「JNCI Cancer Spectrum」誌に掲載されました。

 50歳に至る前に発症する大腸がんは「若年性大腸がん」と呼ばれ、近年増加にあります。

 米国予防医学専門委員会は、大腸内視鏡検査によるスクリーニングの推奨年齢を50歳から45歳に引き下げると発表しました。

高身長の成人は大腸内視鏡検査が推奨されます

 身長の高い成人は身長の低い成人より、大腸がんや大腸ポリープを発症するリスクが高いことが「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」誌に掲載されました。

 研究の結果、リスクは、最大24%高いことが示されました。高身長は、喫煙、飲酒、加工赤肉の多量摂取などと同様に、大腸がんリスクの1つとなりますので大腸内視鏡検査が推奨されます。

肥満の人は大腸内視鏡検査が推奨されます

20歳時点でBMIが25未満だった人では、体重が3kg/5年以上増加していた場合、体重変化のない群に比較し、大腸ポリープ(腺腫)の発生が27%高い結果となり、「JNCI Cancer Spectrum」に報告されました。肥満に人は、大腸内視鏡検査が推奨されます。

高血圧の人は大腸内視鏡検査が推奨されます

高血圧のある人は大腸がんを発症するリスクが高いことが明らかになり、J Am Heart Assoc誌に報告されました。収縮期血圧が140mmHg以上、または、拡張期血圧が90mmHg以上の、未治療の高血圧がある人の大腸がん発症リスクは、血圧が正常な人に比べて17%上昇していました。高血圧の人は、大腸内視鏡検査が推奨されます。

大腸内視鏡検査の早期施行で女性の大腸がんリスクが大幅に低下

 50歳未満の女性に対する大腸内視鏡検査により、大腸(結腸・直腸)がんの発症リスクを大幅に減らすことができるとする研究結果が報告され、「JAMA Oncology」誌に掲載されました。

 リスク低下の程度は、45歳未満で0.37倍、45~49歳で0.43倍でありました。

 男性でも、同様のベネフィットが得られる可能性が高いことが報告されています。

医師の大腸腺腫検出能が高いと将来のがんリスクが有意に低下

 腺腫検出率(ADR)が高い医師に大腸内視鏡検査を受けた人では、検査後に大腸がんを発症するリスクおよび死亡するリスクが有意に低いことが示され、JAMA誌に報告されました。腺腫検出率が1.0%上がるごとに、大腸癌に罹患するリスクが3.0%下がることが、New England Journal of Medicine誌に報告されています。

医師の鋸歯状ポリープ検出率が高いと将来の大腸がん発生率が低下

 医師の鋸歯状ポリープ検出率(proximal serrated polyp detection rate:PSPDR)と大腸内視鏡検査後の大腸がんリスクの関係を検討した結果が「Lancet Gastroenterol Hepatol」誌に報告されました。その結果、大腸がんリスクはPSPDRが1%ポイント上昇する当たり7%低下しました。

大腸内視鏡検査で、1cm以上のポリープがみつかった人では大腸癌死亡率が増加

 大腸内視鏡検査で1cm以上の進行したポリープ(腺腫)が見つかった人では、その後の大腸癌発症率と死亡リスクが高かったことがJAMA誌に掲載されました。大腸内視鏡検査で1cm以上のポリープがみつかった人は、その後も必ず大腸内視鏡検査を受けましょう。

「年1回の便潜血検査 + 大腸内視鏡検査」による大腸癌死亡率低下は30年後まで持続

 30 年の追跡調査結果から,年 1 回の大腸がんスクリーニング(便潜血陽性の場合に大腸内視鏡検査を施行)による大腸癌死亡率低下の割合は、スクリーニングを行わなかった人の0.68倍であったことが、New England Journal of Medicine誌に報告されました。

大腸ポリープ切除後、3年間隔の大腸内視鏡検査による大腸癌予防

 大腸ポリープ(腺腫)切除後、3年間隔で大腸内視鏡検査を行うことによる大腸癌予防効果が明らかとなり、「The Lancet Oncology」誌に報告されました。

2cm以上の早期大腸がん、内視鏡治療が第一選択に

 2cm以上の早期大腸がん患者を対象に内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の長期成績を検討した結果、5年の疾患特異的生存率99.6%で、局所再発は0.5%と低かったことがGastroenterology誌に報告されました。

大腸がん検診、大腸内視鏡 vs 便潜血

 米国では、50歳以上の内視鏡検査受診率は60.3%(2015年)に及び、男女とも大腸がん死亡者数が減少傾向にあります。一方、日本の大腸がん検診は、40歳以上を対象に便潜血検査が行われていますが、大腸がんは増加の一途をたどっております。

便潜血検査+大腸内視鏡による大腸癌の早期診断について

 便潜血反応をきっかけに大腸内視鏡検査を行う場合、なんらかの症状をきっかけに大腸内視鏡検査を行う場合にくらべて、大腸がんをより早期の段階で発見できることが示されています。便潜血検査+大腸内視鏡検査では、stage 1 48%。一方、症状+大腸内視鏡検査では、stage 1 17%。便潜血検査+大腸内視鏡は大腸癌の早期診断に有効です。

便潜血陽性で大腸内視鏡検査を拒否した場合

 便潜血陽性で大腸内視鏡検査を拒否する患者さんの割合は10~30%と報告されています。そのうち、カプセル内視鏡で腫瘍性病変がみつかる割合は60%、CTコロノグラフィで腫瘍性病変がみつかる割合は29%、進行癌で発見される可能性が高いという結果がEndoscopy誌に報告されています。

便潜血陽性後の大腸内視鏡検査の時期について

 大腸がん・進行大腸がんリスクは、8~30日に大腸内視鏡検査を受けた参加者と比べ、2ヶ月目・3ヶ月・4~6ヶ月・7~9ヶ月までに受けた参加者では同等でありました。10~12ヶ月まで遅れた参加者・12ヶ月以上遅れた参加者では大腸がん・進行大腸がんリスクとも有意に上昇しました。便潜血陽性の人は、「半年以内に必ず」大腸内視鏡検査を受けましょう。(JAMA誌より)

大腸内視鏡検査で10年後の大腸がんリスク低下

 大腸内視鏡検査の有効性を検討した結果がNew England Journal of Medicine誌に報告されました。

 55-64歳の健康な男女を大腸内視鏡検査の案内を送るグループ(案内群)と案内を送らず検査も実施しないグループ(通常ケア)に割り付けた結果、10年後の大腸がんリスクは、案内群が0.98%、通常ケア群が1.20%で、リスクが18%低下しました。

内視鏡的ポリープ切除による大腸癌抑制効果は86%

 Japan Polyp Study(JPS)の長期追跡データを解析した結果、内視鏡的ポリープ切除による大腸がん罹患抑制効果は86%でることが明らかとなりました。

 米国のNational Polyp Study(NPS)では、内視鏡的ポリープ切除により、大腸浸潤がん(CRC)が76~90%抑制されることが示されています。